人工授精について
人工授精は不妊治療の過程においてタイミング療法で妊娠しなかったときの次のステップアップとして位置づけられています。
人工授精とは排卵にあわせて、子宮の中に精子を注入する治療法です。細い管を使って子宮頸管をバイパスし、事前に採取しておいた精子を子宮の奥深くに注入します。
精子が子宮、卵管を通過していく間に生理的な精子の選別をうけ、排卵後に卵管内にとりこまれた卵子と自然に出会います。受精、着床は自然妊娠と同じです。
適応疾患は性交障害、乏精子症、乏精液症、精子無力症などです。
女性側の卵管の通過性に問題がない場合が前提になります。
人工授精当日は通常は痛みを感じることはなく、実施後はわずかな時間の安静で帰宅できます。一回の人工授精で妊娠するかたもいますが、妊娠する確率は5~15%程度です。
統計的には6回目以降に妊娠する確率は少なくなるため3~5回の人工授精で妊娠されないかたは体外受精へのステップアップをお考えいただいております。
人工授精(AIH)
精子を子宮内へ直接注入し、卵子と精子が出会う確率を高めます。
排卵前日~当日に行います。方法としては
①精子を容器に採取します。
②精子の雑菌などを取り除くために洗浄しさらに濃縮してから子宮内に注入します。
医師が行うのは子宮内に精子を注入するところまでです。実際に注入された精子が卵子と出会い、受精し、着床し、妊娠に至るまでの過程は自然妊娠と全く同じです。
人工授精で妊娠される方の約90%は4~6回目までに成功するため、その回数を目安に体外受精へステップアップすることが有効です。
人工授精の流れ
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1.生理2~6日目
① 排卵誘発剤を用いて排卵する。 ② 完全自然排卵周期にする。
※①か②を選択していただきます。 -
2.生理10~12日目
超音波検査にて卵胞の大きさ、子宮内膜厚を確認。血液検査でホルモン値をみる⇒排卵日特定
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3.生理12~14日目
奥様
超音波検査で卵胞チェック。専用室にて人工授精。
精液を柔らかく細いチューブにいれ、子宮の内腔に注入します。所要時間1~2分間です。その間痛みなどはありません。まれにカテーテルの刺激でごく少量の出血を認めることがあります。終了後、少し休憩していただき、今後の説明などを看護師から説明させていただきます。ご主人様
当日朝、ご自宅で精液を採取したものを持ち込んでいただくか、院内の採精室にて採精していただきます。凍結精子を使用する方法もご相談ください。
採精された精子は濃縮され、良好な精子を回収するために遠心分離し、精子洗浄培養液で洗浄し、細菌などの不純物を取り除きます。最良な状態の精液を使用します。 -
3.生理14日目以降
黄体補充療法 着床率をあげるために黄体補充をします。
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4.生理28日目以降
人工授精をしてから14日後に血液検査にて妊娠判定を行います。
人工授精のリスク
・子宮内に調整した精液を注入する際、わずかな出血を生じることがあります。
・感染予防のため、施術後に抗生剤処方を致します。
・排卵誘発剤を用い、複数の卵胞が発育した際には、多胎妊娠の可能性があります。そのリスクが高いと想定される場合には、人工授精を中止する場合があります。