院長ノートnotes

卵子の数は年齢を重ねるにつれ減っていく。早めに卵巣年齢検査を。

卵子の数は年齢を重ねるにつれ減っていきます。
卵子の数が最も多い時期は、胎内にいるとき。
月経が始まる頃には最多時の1/3ほどに減っていて、すべての卵子が失われる閉経へと向かっていきます。


つまり、妊娠を考えるなら「卵巣の機能や残されている卵子の数」を、しっかり意識する必要があるともいえるのです。




卵子の数が一番多い年齢は0歳(胎児期)


「卵子は月に1回卵巣から排卵される」ということや、「卵子の数には限りがある」ということは多くの方がご存じかと思います。
それでは、その卵子はいつどのように作られるのでしょう。


頭の中で以下のお話を想像してみてください。


ご自身がまだ生まれる前、お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんの時期よりも、そのもっともっと前のひとつの「卵子」とひとつの「精子」が出会うところからお話は始まります。
卵子と精子が出会い受精卵になると、その後、受精卵は分裂を繰り返しながら徐々に「胎児」と呼ばれる状態に成長していきます。
その分裂を繰り返している最中に、さまざまなホルモンや遺伝情報の働きによって、身体のいろいろな臓器が作られていきます。
顔には目や鼻など、身体には心臓や肺など、そして女性の遺伝子を持っている場合には卵巣ができ、卵巣の中には卵子の細胞が作られ、その卵子の細胞もまた分裂をしてきます。


そうやって、どんどん作られていった卵子は、胎生6ヶ月くらい、ちょうどお母さんが赤ちゃんの胎動を感じられるくらいにまで大きく育ったときにピークを迎え、その数は約600万~700万個ほどと考えられています。


それ以後、卵子が作られることはありません。そのときが卵子の数のピークで、あとは減少していくだけなのです。




卵子の数は年齢を重ねるにつれ少なくなる


一度作られた卵子は減り続け、妊娠10ヶ月、おぎゃーと生まれたときには約200万個にまで減少しています。
こうして不妊症と加齢の関係に注目が集まるようになってきた背景のひとつに、晩婚化の影響があげられます。
2015年の厚生労働省の人口動態統計(概数)によると、男性の平均初婚年齢は31.1歳、女性の平均初婚年齢は29.4歳となっており、2001年と比較すると男性、女性ともに2歳ずつ上昇し、今後も上昇傾向にあることが予測されています。
また、1971年から1974年までの第二次ベビーブームに生まれた方々が、現在43~46歳となり、40代で妊娠を考えられる方が増えていることも、ここ数年、不妊治療が取り上げられるようになった要因のひとつと考えられます。


その後も卵子は減り続け、月経が始まる10~15歳の思春期の頃、「卵巣から卵子が排卵されて、もう妊娠できますよ」と、ようやく身体の準備が整った頃には、卵子の数は約30万個となっています。
そこから、およそひと月に1個の卵子が排卵されていきますが、その過程で、1個の卵子が排卵されるまでに、他に約1000個の卵子が消えてしまいます。
これは、たくさんの卵子の中から、ひとつの成熟した卵子を排卵させるためのホルモン働きで、同じ哺乳動物でもネズミなどのような多胎の動物とは異なるヒト独自の仕組みともいえます。


こうして多くの卵子が消失していき、およそ45~55歳になるとすべての卵子が失われ、閉経となります。
こうして見ていくと、人間にとって45~55歳というのはまだまだ人生の半ばですが、卵子の数から見るとそれはもう「卵子の在庫がなくなる時期」なのです。


つまり、妊娠を考えるときには、自分の一生というライフプラン軸だけで考えるのではなく、「卵巣の機能や残されている卵子の数」ということにも十分な配慮が必要ともいえます。




卵子の数と卵巣機能を調べる「卵巣年齢検査」


卵子の数には個人差があります。
先にお話ししましたように、卵子数は胎生6ヶ月頃にピークを迎えますが、一人ひとりの遺伝情報や、胎内環境などの影響を受け、出生時にはすでに卵子の数に個人差があると考えられます。
また、その後の成長過程の中でも、喫煙などの生活習慣や卵巣腫瘍等の罹患など、外的あるいは後天的な要因が卵子数に影響を与えることがわかっています。


このように、卵巣機能あるいは卵子数は人によって異なり、10代や20代では表面上その差はあまり目立ちませんが、30歳を過ぎる頃から徐々に個人差が目立つようになってきます。
体の中には種々のホルモンが存在しますが、その中で、「抗ミュラー管ホルモン(AMH)」というホルモンの数値が、女性の卵巣に残されている「卵子の数」を反映することで知られています。
年齢とともに減少していく卵子の数とともに、抗ミュラー管ホルモンの数値も低下していきます。
その抗ミュラー管ホルモンの値を調べることを「卵巣年齢検査」と呼ぶこともあります。
抗ミュラー管ホルモンの数値から、「何歳で閉経するのか」といった細かなことまではわかりませんが、同時に他の女性ホルモンなども測定することで、卵巣機能がどの程度保たれているのかを把握することができます。


不妊治療の現場では、最近はほぼどこの施設でもこの数値を測定するようになりました。
また、まだ妊娠を考えていない方でも、たとえば、この数値が年齢平均より大幅に数値が下回る場合には早めの妊娠を検討するなど、ライフプランを考えるひとつの指標になるともいえます。




オリーブレディースクリニック麻布十番 院長 山中

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