院長ノートnotes

コロナウイルスの予防について考えること

コロナウイルスの問題が続く中、その予防方法については、様々な情報があります。

そういった中で、大切なことは

「予防できる可能性があることで、自分ができることは、すべてやっておくこと」

だと、僕は考えています。

「何々は効果がない」とか「何々の効果にはエビデンスがない」という意見も耳にします。

けれど、新型コロナウイルスはこれまで未知のウイルスです。

未知のものに対しては、「効果がある」ということも「効果がない」ということも、まだエビデンスはありません。

たまたまやっていたことが、「後から調べてみると、実は効果的だった」ということもあるかもしれませんし、実際にそういう事例もたくさんあります。

実際の医療の現場でも、「新型インフルエンザ治療薬がコロナウイルスに効果があるかもしれない」など、理論に基づいているとはしても、試しにやってみて、ある程度効果が得られたことについて、後からエビデンスを示そうとしていることもあります。

日常生活や仕事においても、何か目標を達成しようとする時に、「ひとつの方法だけしか行わない」ということはないのではないでしょうか。

意識的に、あるいは無意識的に、「あれはどうか、これはどうか」といろいろな方法を考えて、同時に複数の方法を試しながら進めていると思います。

癌治療では、ひとつの抗がん剤だけではなく、複数の抗がん剤を組み合わせて、同時に投薬することは多々あります。

コロナウイルスは、癌とは異なりますが、やっかいな病気です。

それに対して、「これさえやっておけば大丈夫」というようなシンプルなことではなく、

「ひとつひとつの予防効果は小さいかもしれないけれど、それらを複数組み合わせて、予防のバリアを厚くする、または予防のフィルターの目を密にする」

というイメージでいることが、大切なのではないかと思います。

これからあげる方法は、ごく当たり前のことも含まれています。

またエビデンスが不明なことや、他にもっと効果的な方法もあるかもしれません。

それでも、例えば「外出をしない」とか「人混みには行かない」など、「何かをしない」という意識でいるよりも、「これをする、あれをする」という「何かをする」という気持ちでいる方が、前向きでいられます。

以下、僕も、すべてを毎日やれているわけではありませんが、日々できる限り組み合わせて、取り入れている方法です。

1.マスクの着用

 「マスクの予防効果は小さい」という話を聞くことがあります。

 マスクの隙間よりもウィルスの方が小さいからという理由ですが、吸入するウィルス量を減らす効果は期待できますので、着用すべきだと思います。

 「1日使ったマスクは性能が落ちる」という話もあります。

 けれど、元々マスクも密閉して保管しているわけではないので、1日の使用でどの程度性能が落ちるのか分かりません。

 なかなか手に入りにくい状況の中では、手持ちがなくなってしまう方がリスクなので、マスクの予備が少なくなってきた時には、念のために使ったマスクも置いておく方が安心です。

 また、ネットで予約して買えるようになってきましたので、手持ちがあるうちに予約しておくのがいいと思います。

2.手洗い

 「正しい手の洗い方」もよく言われるようになりました。

 それができるに越したことはありませんが、どれだけ丁寧に洗っても、いつウィルスや菌が付着するかも分からない状況だとすれば、多少雑になったとしても、手を洗う回数を増やした方がいいと思います。

 アルコールスプレーやジェルも小まめに使用します。

 「ポンプの上から下まで押し込んで出てくる量が正しい量です」とテレビで見ましたが、もったいないと思います。手から滴り落ちる量は無駄です。少量ずつ揮発する前に擦り込むように使った方がよいと思います。

 アルコール消毒薬も手に入りにくくなっているので、大切に使うべきです。

 

3.洗顔、シャワー

 ウイルスが付着する可能性があるなら、手だけではなく、顔や髪も洗い流す必要があります。手ほど頻繁に洗えるものではありませんが、必ず行なった方がいいはずです。

 僕は必ず1日2回は行うようにしています。

 あわせて、毎日、髭や鼻毛のカットをして、顔や鼻腔への付着の可能性を減らしています。

4.うがい、歯磨き

 うがいは喉の奥に付着したウイルスを減らすのに効果があります。

 専用のうがい液がなければ、水でも十分とされています。

 歯磨きについては、「歯磨きをしない人は風邪をひきやすい」という報告があります。歯垢にウィルスがつきやすいからと考えられています。できれば、歯間ブラシも併用する方がいいと思います。

5.衣類の洗濯、アルコール除菌

 洗濯ではウィルスは洗い流せないという話もありますし、感染の疑いがある人とは洗濯を分けた方がいいですが、付着しているウィルスや菌を減らす効果は期待できます。

 僕は、着なくなった洋服もだしてきて、着まわしながら、洗濯するようにしています。

 すぐに洗濯できないコートやニットなどは、毎日帰宅後、アルコールスプレーをかけています。

6.空気清浄機

 いろいろな機器があり、ウイルス除去をうたっているものもあります。

 情報の中には、空気清浄機はコロナウイルスを除去できないというものもありますが、もしすでに手元にあるようでしたら、使っておくべきだと思います。

 その際に、空気清浄機は体から遠ざけておいた方が安全です。出てくる空気はきれいでも、一度、周りの空気を引き込むので、空気清浄機の近くは汚れた空気が集まってきています。

7.禁酒、禁煙

 過度の飲酒は免疫機能を落とします。

 また酔った状態になると、注意が散漫になって、上記のことなどができなくなります。

 喫煙は、気道のウイルス排除機能を落として、感染の確率が上昇することが報告されています。

8.運動

 現在、多くのジムが一時閉店をしています。

 僕は、自宅で、腕立て伏せ、腹筋、スクワット、ストレッチをしています。

 外でのランニングは人混みでなければ大丈夫という説もありますが、ウイルスを深く吸い込む可能性もあるので、僕はやっていません。

9.食事

 できるだけ生ものは避けて、加熱されたものを食べるようにしています。

 胃や腸に負担をかけないように、過剰に摂取しないようにしていますが、今は体がエネルギー不足にならないように、カロリー制限はしていません。

10.コンビニエンスストア

 誰が触っているか分からないので、立ち読みをしない。

 キャッシュレス決済をして、紙幣や小銭受け渡しをしない。

 お弁当などは、食べる前に容器をアルコールで拭く。

 特に、ドリンク類の口をつける周囲や、直接ストローを蓋にさすタイプのものは、その部分の消毒を行なう。

11.サプリメントの摂取

 個々のビタミン類の効能をあげれば、より免疫に効果的なものもお勧めすることもできますが、毎日内服するなら、総合サプリメント(マルチサプリメント) でいいと思います。

 血液検査をして、このビタミンが足りないから補充するという内服方法もありますし、そういう補充の仕方が効果的なビタミンもあります。また、食品から摂取する方がいいという考えもあります。

 けれど、自分では気づかないで不足している要素があるかもしれません。

 サプリメントは補助的なものかもしれませんが、ビタミン類は免疫機能にも作用していますので、僕は朝と夜に分けて内服しています。

 あわせて特定保健用食品といわれるものも摂るようにしています。

12.睡眠

 適切な睡眠時間は7時間以上という報告があります。

 僕は自分の生活リズムにあわせて6~7時間としています。

 朝起きた時に、熱はないか、呼吸苦がないか確認するようにしています。

 以上、いくつかあげましたが、他にも注意していることや、心がけていることもあるので、それはあらためて書きたいと思います。

 僕も時には、やり忘れて眠ってしまうこともありますが、意識していれば、また次の日から生活を修正することができます。

 普段、自分の「免疫機能がどうか」ということを意識することはありませんが、同じ悪い環境にさらされた時、その差は、発症するかどうかということで表面化します。

 自分では見ることのできない免疫機能が、もしも感染に耐えられないほど低かった時に備えて、自分の行動の改善でカバーできればと思っています。

 生活環境の違いなどによって、できることもあれば、できないこともあると思います。

 僕は、クリニックに来院される患者さん、働くスタッフ、周りにいる人達を守るために、まずは自分が健康でいること、そして、知らないうちに不顕性感染を起こして他の人にうつさないことを意識しています。

 参考になる部分がありましたら、感染予防のために、生活に取り入れていただければと思いますし、違う方法でも、できるだけ複数の方法を取り入れていただくことを心がけていただければと思います。

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